introduction
ビッグバン 宇宙誕生のその昔── わずかずつ収縮をしていく空間の中で、かすかな会話が続けられていた── ほんとうに微かに──しかし、確かな息遣いで── 「キミの夢は?」 「ぼく?ぼくの夢はね──」 「どんなのを造るの?」 「そうだなぁ──」 それは、未来の造物主となる者たちの会話であったかもしれない── 「あのヒトの姿の生物には──」 「ぼくの造る世界には、もう知的生物は必要ない」 「そう?ぼくの造る世界には、たくさんの変化が欲しい」 「きみは、以前も干渉好きだったからなぁ」 「そういうきみこそ、ぼくの世界にまで入りこんできたじゃないか──」 「あれは、ぼくが、ちょっと目を離したスキに──」 「どれくらい目を離していたら、あんなことになるのさ」 「う〜〜ん、2000年ほど、隣の世界に行ってただけだよ」 「それは目を離し過ぎだよ」 あたかも、シミュレーションゲームを繰り返しているものたちのごとく── 会話は、続けられてゆく── 「けっきょく、あの歪みが、全てを壊してしまったね」 「ぼくのせいだと言うのかい?」 「そうは言ってない、またやり直せばいいんだ」 そして、時は流れ── 「そろそろ、みんなのプランは決まった?」 「ぼくは、時の境目のない世界を作ってみるよ」 「ぼくは、やっぱり、広大な宇宙空間を作って、いろいろな生物を出会わせてみたい」 「わたしは、奇跡に彩られた世界を──」 「わたしは、美しい精神世界を──」 「ぼくは、絶対に干渉せず、なるがままの世界を静かに見守りたい」 「ぼくは──」 「わたしは──」 「──」 「…」 幾千もの応えが、その圧縮された空間に激しく反響しながら── そして── ……はじけた! |